2026.09.15
電気主任技術者の外部委託とは?自社選任との違い・条件・選び方を解説
工場や商業施設、学校・庁舎などに高圧の太陽光発電設備や蓄電設備などを導入・運用する際、重要となるのが、電気事業法に基づく「電気主任技術者」の選任です。
高圧の電気設備では、電気主任技術者が設備の保安管理を担います。
近年は、電気主任技術者の高齢化や人材不足を背景に、有資格者を確保することが難しくなっています。そのため、一定の条件を満たす設備では、電気主任技術者の業務を外部へ委託する「外部委託」が選択肢となっています。
外部委託を検討する際は、委託費用だけでなく、点検内容や緊急時の対応体制、設備の状態把握、保守業務との連携などを含め、設備や運用状況に適した委託先を選ぶことが重要です。特に太陽光発電設備では、適切な保安管理によって設備の異常を早期に把握し、発電停止などのリスクを抑えることが求められます。
本記事では、太陽光発電設備や蓄電所における電気主任技術者の役割や選任が必要となるケースから、外部委託承認制度の条件、自社選任との違いまでを解説します。
この記事のポイント
- 太陽光発電所は出力50kW以上の場合、電気事業法第43条により電気主任技術者の選任が義務付けられている
- 出力5,000kW未満かつ連系電圧7,000V以下で、保安業務担当者の主たる連絡場所から事業場まで2時間以内に到達できる設備は、外部委託承認制度により、電気保安法人などへの委託が可能
- 電気主任技術者の高齢化や人材不足を背景に、有資格者の確保が課題となっている
- 委託費用だけでなく、点検内容や異常発生時の対応体制、保守業務との連携まで確認することが重要
太陽光発電所の保安管理を担う「電気主任技術者」
電気主任技術者とは
電気主任技術者とは、電気事業法に基づき、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督を行う国家資格です。
第一種・第二種・第三種に区分され、対象設備の電圧や規模に応じて必要な資格が異なります。
太陽光発電所における電気主任技術者の「役割」と「選任義務」
電気事業法第43条により、自家用電気工作物の設置者は、電気主任技術者を選任し、保安規程に基づいて電気設備の保安を確保する必要があります。太陽光発電所の場合、出力50kW以上の設備が自家用電気工作物に該当し、この選任義務の対象となります。系統に接続する蓄電所については、出力や電圧の規模にかかわらず、電気主任技術者の選任と保安規程の届出が義務付けられています。なお、太陽光発電所に付随して設置される蓄電池は、発電所全体の保安規制の中で扱われます。
太陽光発電所や蓄電池設備では、パワーコンディショナや変電設備などの電気設備について、保安上必要な点検・確認や、絶縁抵抗測定・接地抵抗測定、異常時の対応などを行い、設備の保安を確保することが電気主任技術者の役割です。
電気主任技術者は、保安規程などに基づいて定期的に電気設備を点検し、設備の異常や不具合がないかを確認します。主な点検には、「月次点検(定期点検)」と「年次点検」があります。
| 点検 | 頻度 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 月次点検(定期点検) | 2〜6ヶ月に1回以上※ | 電気主任技術者が設備を巡回し、異音・異臭や漏洩電流などを確認します。電気設備の状態に異常がないかを確認します。 ※設備に応じて2~6ヶ月に1回以上(太陽光パネル・パワーコンディショナ等は6ヶ月に1回以上、受変電設備は設備条件・監視体制により2〜6ヶ月に1回以上) ※「月次点検」は法令上の呼び名で、毎月実施するとは限りません。 |
| 年次点検 | 年1回 | 停電を伴う点検・試験を行い、絶縁抵抗測定や保護継電器試験(リレー試験)など、より詳細な確認を実施します。 |
こうした点検・試験によって設備の状態を継続的に確認し、異常が見つかった場合には、原因の確認や必要な対応につなげます。
保安管理が適切に行われないと、設備の異常や劣化を見落とし、故障や事故、発電停止などにつながる可能性があるため、電気主任技術者による継続的な保安管理が重要です。
出典:経済産業省「電気主任技術者制度について」
出典:経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」
出典:経済産業省「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等並びに第五十三条第二項第五号の頻度に関する告示(平成15年経済産業省告示第249号)」
電気主任技術者の「高齢化」と「人材確保」の課題
電気保安業界では、電気主任技術者の高齢化や、将来の担い手となる人材の確保が課題となっています。
特に地方の発電所では、有資格者の退職後に後任を確保できず、選任そのものが難しくなるケースもあります。
電気主任技術者は、資格を取得するだけでなく、実務経験を積みながら専門的な知識や技術を身につけていく必要があります。そのため、資格取得から電気主任技術者としてのキャリアを形成するまでには時間がかかり、有資格者の高齢化・退職に対して、次世代の人材育成が追いつきにくいことも課題の一つです。さらに、太陽光発電設備の増加により保安管理の対象施設も増えており、電気主任技術者の確保は今後も重要な課題となることが考えられます。
出典:経済産業省「電気保安人材を巡る現状及び今後の課題について」
出典:経済産業省「電気保安分野を巡る環境変化を見据えた中長期的な安全確保に向けて」
ユニバーサルエコロジーでは、こうした業界課題に対応するためにも、電気主任技術者をはじめとする電気保安人材の確保・育成に取り組んでいます。社内では、資格取得支援や研修などを通じて、電気保安を担う人材の育成を強化中です。また、求職者の方に向けて、電気主任技術者の仕事や資格取得について知る機会を提供するとともに、キャリア相談を実施しています。
電気主任技術者をはじめとする電気系資格について、詳しい情報やキャリアに関するサポートをご案内しています。
電気主任技術者の「外部委託承認制度」とは?
電気事業法施行規則第52条第2項に基づき、一定の要件を満たす設備であれば、所轄の産業保安監督部長の承認を受けることで、設置者が自ら電気主任技術者を選任する代わりに、外部の電気保安法人などへ保安管理業務を委託することができます。この制度を「外部委託承認制度」と呼びます。電気主任技術者の選任形態の約9割が外部委託です。
【外部委託が可能な条件(一部抜粋)】
- 太陽光発電所・蓄電所の場合、出力が5,000kW未満かつ連系電圧が7,000V以下であること
- 保安業務担当者の主たる連絡場所から事業場まで2時間以内に到達できること
設置する設備が条件に合致するかは、専門知識を持つ事業者に事前に確認することをおすすめします。
出典:e-Gov法令検索「電気事業法施行規則第52条第2項」
出典:e-Gov法令検索「電気事業法施行規則第53条第2項第6号」
出典:経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」
出典:経済産業省 中部近畿産業保安監督部「保安管理業務外部委託承認申請」
出典:経済産業省「電気主任技術者制度について(令和5年10月26日 資料1)」
電気主任技術者の「自社選任」と「外部委託」を比較
電気主任技術者を自ら選任する場合と、外部委託する場合の違いを、費用や人材確保、管理負担などの観点から比較します。
| 比較項目 | 自社選任 | 外部委託 |
|---|---|---|
| 人材確保 | 有資格者を自社で確保 | 委託先が担当する技術者を確保 |
| コスト | 自社の人員体制に応じた人件費・教育費などが発生 | 契約内容に応じた委託費用が発生 |
| 退職・異動への対応 | 担当者の退職・異動時には後任の確保が必要 | 委託先の体制により担当者変更などに対応 |
| 教育・研修 | 自社で教育・研修などを実施 | 委託先の教育・研修体制を活用 |
| 保安管理体制 | 自社の組織・人員体制に応じて構築 | 委託先の組織・人員体制のもとで対応 |
なお、事業場側に技術者を配置している場合は、異常発生時に現場へ駆け付けて状況を確認しやすいという利点もあります。
設備の規模や運用体制に応じて、双方の特性を踏まえて検討することが重要です。
電気主任技術者の「外部委託先選び」で確認しておきたいポイント
点検内容と実施範囲を確認する
電気主任技術者の外部委託先を選ぶ際は、委託費用だけでなく、どのような点検・確認を行うのか、実施範囲を事前に確認することが重要です。太陽光発電設備や蓄電池、受変電設備など、対象となる設備の点検項目や確認方法を確認し、異常が見つかった場合の報告・対応方法まで把握しておくことで、設備の状態を継続的に把握しやすくなります。
異常発生時の対応体制を確認する
外部委託先を選ぶ際は、担当する電気主任技術者の体制だけでなく、異常発生時の連絡方法や対応体制についても確認しておくことが大切です。設備に異常が発生した場合に、どこへ連絡し、どのように状況を確認するのかなど、委託後の対応の流れをあらかじめ確認しておくことで、必要な対応を円滑に進めやすくなります。
また、電気主任技術者による保安業務と、設備の修繕や部品交換などを行う保守業務は、それぞれ異なる役割を担います。
保安業務と保守業務を別々の事業者に委託する場合は、異常発生時に電気主任技術者と保守・修繕を担う事業者がどのように情報共有し、原因の確認から修繕まで連携するのかも確認しておくことが重要です。
保守・修繕の対応範囲を確認する
保守業務には、定期的な点検のほかに、設備に異常が発生した場合の現地確認や原因調査、修繕、部品交換などが含まれる場合があります。どこまでを保守業務として対応するかは、事業者や契約内容によって異なるため、費用や対応方法について契約前に確認しておく必要があります。
例えば、パワーコンディショナなどの機器に異常が発生した場合、現地での状況確認や原因調査に加えて、部品交換や機器の修繕が必要となった場合、どこまでが契約に含まれているのか、修繕や部品交換に別途費用が発生するのかを確認しておくことが重要です。
また、異常発生時の現地対応について、対応可能な時間帯や現地へ駆け付けるまでの体制なども確認しておくとよいでしょう。特に発電設備では、設備の停止が長引くと収益の大きな損失につながる可能性があります。
まとめ:電気主任技術者の選任方法を検討するポイント
太陽光発電所などの電気設備を安全に運用するためには、電気事業法に基づく電気主任技術者の選任が欠かせません。
有資格者の高齢化や人材不足によって、自ら電気主任技術者を確保することが難しい場合は、外部委託承認制度を活用することも選択肢となります。自社選任と外部委託にはそれぞれ特徴があるため、有資格者の確保状況や設備の規模、運用体制などを踏まえて、適した保安管理方法を検討することが重要です。
自ら電気主任技術者を選任する場合は、事業場側に技術者を配置することで、異常発生時に現場へ駆け付けて状況を確認しやすいという利点があります。一方、外部委託では、必要な保安管理体制を外部の専門機関に委ねることができます。設備や運用体制、今後の人材確保の見込みなどを踏まえ、自社に適した方法を検討しましょう。
ユニバーサルエコロジーは、経済産業省 中部近畿産業保安監督部管内(中部エリア)で電気保安法人として登録しており、発電設備の設計・施工から運用・保守(O&M)、電気主任技術者の外部委託承認申請の手続き支援を含む保安管理まで、一貫して対応しています。
提携パートナーネットワークを活用し、山間部や遠隔地を含む全国各地の発電設備にも対応できる保安管理体制を構築しています。運用・保守(O&M)と電気保安を連携させることで、設備の状態把握から異常発生時の確認・対応まで、発電設備の安定した運用を継続的にサポートします。
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