2026.03.28
公共施設の太陽光導入が「計画」で止まる原因。自治体に必要な現場の「実務力」│特別対談・第2回
「脱炭素の計画はある。しかし、いざ公共施設に太陽光発電を導入しようとすると、前に進まない——。」
前回の対談では、全国の自治体担当者様を苦しめる「圧倒的なリソース不足」や、地方特有の「生存戦略としての電源確保」について語り合い、実務を丸ごと巻き取る伴走体制の重要性をお伝えしました。
しかし、補助金を活用して1年がかりで調査報告書を完成させても、いざ施工に向けた公募・入札の段階でプロジェクトが宙に浮いてしまうケースは少なくありません。今回の対談では、なぜコンサルの計画書だけでは工事が進まないのか、その根本的な原因である「補助金調査と実行フェーズの分断」の実態に迫ります。
引き続き、現場を知り尽くした2人のプロフェッショナルが、長期にわたる確実なプロジェクト成功へと導くための鉄則を熱く語り合います。
この記事のまとめ
- 補助金を活用した「ポテンシャル調査」は、調査のみで終了するケースが多く、実際の施工フェーズに進まない事態が多発している。
- 知名度や大手という基準で業者を選定すると、複雑な現場ごとの実務に対応できず、プロジェクトが宙に浮く原因となる。
- 公共事業において最も難易度が高いのは工事自体ではなく、図面と現場の乖離を埋め、確実に実行できる「施工計画」を作り込むプロセスにある。
- 初期費用ゼロのPPAモデルは20年の長期契約となるため、事業継続性の高い公共施設においては、最後まで責任を持って伴走できる実務パートナー選びが重要。
公共施設の太陽光導入が「計画」で止まる理由。知名度への安心感が招く、計画と実務の分断
—— 前回、せっかく国の補助金を使って調査報告書を作っても、それが実行できずに止まってしまうケースがあるとお聞きしました。それはなぜなのでしょうか?
北野:結論から言うと、実務と切り離された「計画」だけが先行してしまう実態があるからです。
地域で脱炭素事業を進める際、まずは補助金を活用して1年かけて「ポテンシャル調査(導入可能性調査)」を行うのが一般的な流れです。自治体の担当者様としては「絶対に失敗できない」というプレッシャーがあるため、知名度のある大手のコンサルティング会社などに調査を依頼し、安心感を得ようとする心理が働きます。それは、組織として責任を果たす上でも、極めて自然な選択だと思います。
石田:しかし、そうした大手コンサルティング会社は、「計画」や「調査」を専門としているため、小中学校や市役所庁舎、給食センターや浄水場といった公共施設ごとの複雑な施工実務までは請け負わない、あるいはノウハウがないケースが非常に多いのが実態です。
そのため、時間と予算をかけて『調査報告書』を作ったとしても、いざ実際の「実行(施工)」フェーズに移ろうとした途端に、実務を請け負うことのできる業者が見つからず、プロジェクトが止まってしまうのです。

図面と現場の乖離を埋める「施工力」。公共施設への太陽光導入に潜む、本当の難易度
—— 「調査報告書さえあれば、あとは工事を依頼するだけ」と思われがちですが、実際のところはいかがなのでしょうか。
石田:実は、調査報告書が完成した後のプロセスこそが、プロジェクトを完遂できるかどうかの本当の「正念場」だと言えます。
屋根上に太陽光パネルを取り付ける「工事自体」はそこまで難しくありません。
我々からすると、「工事を行うまで」が一番難しいのです。
建物の構造計算や防水状況の検証、電力会社との専門的な技術協議、そして施設特有の様々な制約を細かく確認して、初めて安全に設置できるかどうかが判断できます。
現場の状況に合わせて『どのような手順で仕上げていくのか』という、実行可能な計画を作り込むプロセスが最も難易度が高いのです。
北野:まさにその通りで、私が実際に携わった案件でも、事前の調査報告書では「図面上の屋根面積から50kW分の太陽光パネルが設置できる」想定だったものが、現場調査をすると、築年数による耐荷重不足や、近隣の建物・樹木による影の影響で、実際には「10kW分」しか設置できないという5倍近くの乖離が発覚しました。改めて調査からやり直して、プロジェクトを完遂できるようなプロセスを立て直した経験があります。
石田:地方脱炭素の現場で今、直面している構造的な課題は、「計画の策定」と「施工責任」が分断されてしまっている点にあります。コンサルティングに特化した計画では、その後の複雑な実務や、20年先まで続く運用責任の視点がどうしても抜け落ちがちです。
北野:同感です。実際の現場では、膨大な行政手続きや施設内での緻密な調整業務といった、図面上には現れない「泥臭い実務」が山積みです。事前のポテンシャル調査で描かれた美しい構想を、いかにして「現実の施工プラン」へと着地させるか。数字上のシミュレーションを、確実な発電実績へと変換する力こそが、今、地方自治体の皆様から切実に求められていると感じます。

20年先まで見据えた「真の実務パートナー」選びの基準
—— そうして実行段階で宙に浮いてしまった場合、自治体はどのようにして次のパートナー(施工や運用などの実務を担う企業)を選べばよいのでしょうか。
北野:入札の仕様などでは「過去の導入実績(件数)」が評価基準になりがちですが、知名度や実績の数字だけで選定してしまうのは非常に危険です。重要なのは、ありとあらゆる現場を経験し、建物ごとに異なる状況に合わせて細やかに「実行」できる実務の強みがあるかどうかです。
石田:また、導入手法の視点も重要です。
現在、初期費用ゼロで太陽光発電を導入できる「PPA(第三者所有モデル)」という手法が、予算や人員の限られた多くの自治体で主流になっています。これは、自治体の施設の屋根に民間事業者が太陽光発電設備を設置・所有し、自治体側は電力会社から購入するよりも安価に設定された単価で使用した分の電気代を支払う仕組みです。「初期費用・メンテナンス費用がゼロで毎月の電気代を削減できる」という大きなメリットがありますが、一方で、通常は20年という非常に長い契約になります。

実はここが非常に重要なポイントです。
民間企業の場合、20年の間には拠点の移転や撤退といった変化があるかもしれません。しかし、役場や学校は地域のインフラですから、20年後も同じ場所に存在し続けるケースがほとんどです。建物が残り続ける以上、導入した設備も20年間、正常に動かし続けなければなりません。
PPAは事業者がメンテナンスを担う仕組みですが、もし途中で事業者が倒産したり、メンテナンス業者が撤退してしまったらどうなるでしょうか。メンテナンスされない設備が屋根に取り残され、結果として自治体がその「負の遺産」を抱え続けることになります。だからこそ、目先の調査報告書の綺麗さで選ぶのではなく、「20年先まで責任を持って伴走してくれる実務のプロ」をパートナーに選ぶ必要があるのです。
—— 事業継続性の高い公共施設だからこそ、単なる「工事」ではなく、20年の「事業」を任せる相手として見極める必要があるということですね。次回の第3回では、図面や調査からだけでは分からない「現場ごとの制約」についてさらに深掘りします。病院や学校の屋根がいかに特殊で、高度な施工技術を必要とするのか。公共案件のリアルな最前線に迫ります。
「計画書はあるが、実務が進まない」とお悩みの自治体担当者様へ。
現場を知り尽くしたユニエコが、計画の見直しから確実な施工までを一貫して伴走します。





