2021.05.21
逆潮流対策とは?自家消費型太陽光発電の課題と解決方法
自家消費型太陽光発電と逆潮流
太陽光発電の主流は、固定価格買取制度(FIT)を利用した「全量売電型」から、発電した電気を自ら使用する「自家消費型」へと大きくシフトしています。特に工場や事業施設で自家消費型太陽光発電システムを導入する事例が急増しています。
2021年時点では法人向け電気料金(高圧区分・従量電灯)が15~20円/kWh程度でしたが、2025年時点での産業用太陽光のFIT買取単価は10円前後に低下。これにより、売電よりも「自家消費」の方が経済的に優位な状況となっています。
また、FIT制度の改正やカーボンニュートラル政策の進展によって、余剰売電や全量売電の条件は年々厳しくなっており、特に50kW以上の高圧設備では自家消費を優先する傾向が強まっています。こうした背景から、今後ますます「自家消費型太陽光発電」の導入は拡大すると予想されます。
自家消費型太陽光発電の導入にあたって特に重要なのが、「逆潮流対策」です。
逆潮流とは
逆潮流とは、発電した電力が電力網(系統)に逆流する現象を指します。
通常、電気は電力会社から家庭や企業など需要側へ流れます。これを「順潮流」と呼びます。
しかし、自家消費型や全量売電型の太陽光発電システムでは、需要側で発電した電力が余った場合、需要家側から電力系統へ流れることがあります。これが「逆潮流」です。
逆潮流は、設備や電力系統の安全性・効率に影響を与える可能性があります。
特に自家消費型太陽光発電では、逆潮流が発生すると、システム性能の低下や寿命の短縮、さらには法的・電力契約上のトラブルが生じるリスクがあります。
そのため、太陽光発電システムを導入する際は、逆潮流の原因や影響を理解し、適切な「逆潮流対策」を講じることが重要です。逆潮流の仕組みを理解することで、自家消費型太陽光発電の効果を最大化できます。
自家消費型よくあるトラブル「逆潮流問題」
自家消費型太陽光発電で発電した電力は、「構内ですべて消費する」という条件で「系統連系」しているため、そこから系統(電線)に向かって電力が流れていくことを想定していません。
通常時、電力は自社内でどんどん消費され、「系統」側へ流れることはないのですが、祝祭日や連休等で自社で電力をほとんど消費しない状態となると、使われない電力は系統へ流れ込むことになります。これが逆潮流です。系統側は「入ってくるはずがない電力」が流入し、しかも一定ではなく、天気の具合で電力量が変わる、とてもやっかいな状態になってしまいます。こんなことが系統のあちらこちらで起きてしまったら、周波数の変動に耐え切れずに系統がダウン、つまり停電してしまいます。
逆潮流した電気量が急増し、変電所の受電能力を超える電力が流れ込んだ状態のことを「バンク逆潮流」といいます。
この「バンク逆潮流」が発生すると、配電系統の電圧を適切に制御できなくなり、配電線の電圧品質の劣化・不良や電力の安定的な供給に支障をきたす恐れがあります。
出典:経産省電力安全課 「バンク逆潮流の制限の緩和について」
逆潮流によって起こる問題
発電損失
逆潮流が発生すると、逆電力継電器(RPR)が動作することにより、パワーコンディショナーが停止し、発電がストップします。これにより長時間の発電機会の損失につながります。逆電力継電器(RPR)は、系統連系規定で設置が義務付けられています。
機器の故障
パワーコンディショナーなどが停止する可能性があります。
パワーコンディショナーが停止している間は発電はされません。これを防止するためには、太陽光発電出力の制御がカギとなります
感電事故の可能性
逆潮流によって停電が発生した場合、配電線の遮断器によって、一部の配電線が電力系統から物理的に切断されます。
この時、そこに連系されている太陽光発電システムが発電を継続してしまうと、電力系統へ太陽光発電システムから電圧が印加されます。このような状況では、保守点検者は電圧印加に気付かず、停電により無電圧であると勘違いして配電線に触れ、感電するおそれがあり、その防止策として、パワーコンディショナーには単独運転防止機能が設けられています。パワーコンディショナーには受動的方式と能動的方式の2種類の単独運転防止機能を内蔵するよう系統連系規程に定められています。
自家消費型太陽光発電で逆潮流を防ぐ方法
電力を安定的に供給するためには、発電量と消費量が常に一致していることが前提です。
自家消費型太陽光発電で逆潮流を防ぐ方法は主に2つあります。
①発電した電気を使い切れる設計をする
発電量を日中の消費電力量に合わせ、電気を使い切る方法です。
ただし、この場合は電気代削減効果が小さくなる可能性があります。
②発電出力制御装置を設置する
可能な限り多くの太陽光パネルを設置しながら、使用電力量に応じて発電量を自動制御します。
これにより電気代削減効果を最大化しつつ、逆潮流の発生を未然に防げます。
前者の場合、電気代削減効果は小さくなる可能性があります。
一方で、後者の場合は、太陽光パネルを可能な限り多く設置し、電気代削減効果を最大化しつつも、使用電力量の増減に合わせて、自動的に太陽光での発電量を抑制し、逆潮流の発生を未然に防ぐことができます。
自家消費型太陽光発電では、逆潮流を防ぐために「安全装置」と「制御装置」の設置が不可欠です。
これにより、効率的かつ安定した電力利用が可能になります。
逆電力継電器(RPR:Reverse Power Relay)
逆方向の電力を検出すると信号を発信し、発電設備の停止や遮断器を開放する等の処理を行い、逆潮流を防止する電器です。低圧連系・高圧連系の場合、系統連系規定で設置が義務付けられています。RPRは「67P」と呼ばれることもあります。
RPRの作動は長時間の発電機会の損失につながるため、太陽光パネルを設置可能な屋根に最大限設置するのではなく、あえて消費電力量よりも少なめに設置することが一般的ですが、そもそもRPRが動作しないように発電電力を最適に自動制御する制御システムも存在します。
制御装置
系統へ逆潮流を起こす前に、太陽光発電設備の出力を制御します。
逆潮流が起こるとパワーコンディショナーなどが停止してしまう恐れがあるため、その制御がカギとなります。発電量と需要のバランスが崩れると逆潮流が発生してしまうため、そのギリギリを見極めたうえでどこまで設備効率を高められるかが肝になります。
負荷追従制御
負荷追従制御は、パワーコンディショナーの出力や電力を比較しながら発電電力をあらかじめ制御します。消費電力に追従した発電量コントロールを行い、必要以上の発電抑制を行わないため、高い追従性能が期待できます。
遠隔監視装置
遠隔監視装置によって、負荷追従制御が発生した時間帯を把握することができます。
遠隔監視装置がない場合、発電量と消費電力量を日々観測できないだけなく、予期せぬ異常時が分かりません。
パワーコンディショナー
パワーコンディショナーそのものに逆潮流制御機能が組み込まれたものも販売されています。
パワーコンディショナーには「逆潮流制御機能」以外に「MPPT(最大電力追従制御)」「系統連系保護機能」といった役割があります。
自家消費型のカギは逆潮流の回避
自家消費型太陽光発電で重要なのは、逆潮流の回避です。導入を検討する際は、今回のポイントをぜひ参考にしてください。
疑問点や不安がある場合は、事前に販売施工業者へ確認し、内容を十分に理解・納得した上で設備を導入することが大切です。
長期にわたって安定的に発電を続けるためには、信頼できる施工パートナー選びが欠かせません。
施工業者を選ぶ基準としては、以下がポイントです。
- 自家消費型太陽光発電の施工実績が豊富であること
- 見積もり時に細部まで丁寧に説明できること
- 導入後も安心してメンテナンスを任せられること
つまり、技術力が高く、工事内容を把握し、信頼できる業者であることが重要です。
ユニバーサルエコロジーは、これまでに5,000件以上の太陽光発電設備を設置してきた豊富な実績と技術、知識を有し、自家消費型太陽光発電における国内トップクラスの実績を誇ります。
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このワンストップ体制により、逆潮流問題も含めた自家消費型太陽光発電の課題を総合的に解決可能です。設計段階から逆潮流対策を盛り込み、施工・保守まで一貫して管理することで、長期的に安定した電力供給と安心運用を実現します。
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