2025.11.28
系統用蓄電池の収益最大化戦略:マルチ市場と需給調整市場のシミュレーション
この記事でわかるポイント
- 系統用蓄電池の収益は「マルチ市場戦略」で最大化する
- 需給調整市場が収益の主軸となる理由とその構造(ΔkW価値・kWh価値)
- 一般的な系統用蓄電池(5MW)における需給調整市場の収益シミュレーション目安
系統用蓄電池の収益を最大化する「マルチ市場戦略」とは
系統用蓄電池事業の収益性を高める上で最も重要なのが、「マルチ市場戦略(レベニュースタッキング/Revenue Stacking)」です。
これは、単一の市場に頼るのではなく、複数の電力市場を戦略的に組み合わせて収益の安定性と上振れポテンシャルを両立させる手法を指します。
収益の主軸となる「需給調整市場」の役割
マルチ市場戦略の主軸となるのが、需給調整市場です。
この市場では、一般送配電事業者が電力の需給バランスを保つために必要な「調整力」を調達しており、系統用蓄電池の高速応答性が高付加価値サービスとして評価されます。
需給調整市場における2つの報酬
系統用蓄電池は、需給調整市場において主に以下の2種類の報酬を得ることができます。
| 報酬の分類 | 報酬の内容 | 収益の性質 |
|---|---|---|
| ΔkW価値 | 一定の出力を待機状態で確保しておくことへの報酬(スタンバイ報酬) | 調整力の容量(kW)に対する報酬 |
| kWh価値 | 需給逼迫時に発動指令に従って実際に放電したことへの報酬 | 実際の電力量(kWh)に対する報酬 |
収益シミュレーション:需給調整市場の目安
市場価格や応札ブロック数、設備投資費(CAPEX)によって収益性は大きく変動しますが、具体的な収益目安は事業計画策定の参考になります。
一般的な5MW蓄電池の年間収益目安
- 一般的な5MWの系統用蓄電池を想定した場合、需給調整市場からの年間収益は、9,000万円程度と見積もられるケースが多いです。※この試算はモデルケースであり、市場価格の変動やアグリゲーターの運用実績により異なります。確実な収支計画には、詳細なシミュレーションが必要です。
- 経済産業省の試算例では、応札価格が15円/ΔkW・hで、1日1ブロック応札するだけでも、設備投資費(CAPEX)が7万円/kWh程度であればプラスのリターンが見込めるとしています。
特に系統用蓄電池は、火力発電など他の調整力電源と比較して瞬時の出力調整に優れるため、一次調整力(FFR/FCR等)といった高速応答性が求められる高単価の商品区分への参入が、収益の主力となります。
収益最大化を実現するマルチ市場戦略の全体像
需給調整市場を主軸としつつ、以下の市場を組み合わせることで、事業全体の収益安定性と上振れポテンシャルを両立させることが成功の鍵です。主要な3つの市場と系統用蓄電池の役割について見ていきましょう。
マルチ市場戦略の組み合わせと役割(目安)
| 市場 | 収益の種類 | 収益の割合(目安) | 系統用蓄電池の役割 |
|---|---|---|---|
| 需給調整市場 | 調整力提供報酬(ΔkW/kWh価値) | 40〜50% | 高速応答性を活かした調整力の提供 |
| 容量市場 | 供給力確保への固定報酬(kW価値) | 20〜30% | 4年後の供給力としての容量を売却し、安定収入を確保 |
| 卸電力市場 (JEPX) | 価格裁定取引(アービトラージ) | 20〜30% | 夜間の安価な電力で充電し、昼間の高価な時間に放電して価格差益を獲得 |
これらの市場を横断的に運用することで、系統用蓄電池の設備を遊ばせることなく、多角的な収益機会を得ることが可能になります。特に、卸電力市場での価格裁定取引(アービトラージ)は、市場価格の変動を利用して収益の上乗せを狙える重要な要素です。
成功のための運用戦略とユニバーサルエコロジーの強み
AI・EMSと市場運用の「自社運用」
収益を最大化するには、市場価格の動向分析や需給予測に基づき、自動で最適な充放電スケジュールを組み、複数市場を横断して効率的な運用を行う必要があります。通常、市場への応札や運用は外部のアグリゲーター(調整力供給者)に委託するケースが多いですが、ユニバーサルエコロジーは「特定卸供給事業者」として市場運用業務を自社運用しています。
市場価格に基づいた充放電の最適制御もすべて自社で行えるため、外部委託によるタイムラグやコストロスを排除し、AI・EMS(エネルギーマネジメントシステム)を駆使した高度な運用で収益の最大化を実現可能です。
【ユニエコの強み】開発から市場運用までワンストップで対応
市場の不確実性が依然として高い系統用蓄電池事業において、長期安定収益を実現するためには、高度な市場分析と運用ノウハウが不可欠です。
ユニバーサルエコロジーは、再生可能エネルギー開発のプロフェッショナル集団として、系統用蓄電池事業における全工程をワンストップで対応します。具体的な対応範囲は以下の通りです 。
- 適地探しから用地開発
- EPC(設計・調達・建設)
- 市場運用(特定卸供給事業)
- 保守点検(O&M)
- 保安管理(24時間監視体制)
単なる施工業者ではなく、総実績数5,000件以上のプロ集団として 、市場分析に基づいた最適な設備設計・運用戦略をご提案いたします。特に、九州エリアなどで顕著な「出力制御」のリスクも踏まえた、20年間の長期収支シミュレーションをご提示できるのが当社の強みです。
まとめ
系統用蓄電池事業は、電力系統安定化への貢献と、高い収益性を両立できる将来性の高い事業です。
成功の鍵は、需給調整市場を主軸とした「マルチ市場戦略」と、それを支える高度な運用ノウハウとAI・EMSの活用にあります。
大規模な系統用蓄電池プロジェクトの開発、EPC、および自社運用による収益最大化戦略についてお悩みの際は、特定卸供給事業者として市場運用までワンストップでサポートできるユニバーサルエコロジーに、ぜひお問い合わせください。
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