貯水池・ため池の水面を活用した
水上太陽光発電「ため池太陽光発電」

農業用ため池が新たな電力供給源に

再エネ拡大を後押しする「水上太陽光発電」

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの拡大は必要不可欠です。
しかし、国土の75%を山地が占める日本では、メガソーラーを建設できる土地は限られており、利用できる土地が年々減少してきています。

そこで注目されているのが、ため池などの水面上に太陽光パネルを設置する「水上太陽光発電」です。
「水上設置型太陽光発電システム」「浮体式太陽光発電所」「ため池ソーラー」「水上ソーラー」「フロート式太陽光発電」とも呼ばれており、太陽光パネルを水面に設置して発電します。
太陽光発電所の新たな適地とされている「ため池」は、農林水産省の発表によると、全国に約21万ヶ所、その大半を「農業用ため池」が占めており、ため池を含む水上空間における水上太陽光発電の導入可能ポテンシャルは、39GWと推計されています。

この発電ポテンシャルは耕作地に次ぐもので、山間地域が多く太陽光発電が設置できる面積が限られている日本において、ため池を活用した水上設置型太陽光発電は、カーボンニュートラル達成のために無視できない存在となっています。また、水上設置型太陽光発電は、地上設置型太陽光発電と比べて発電量が10~20%多く、木の伐採や土地の造成などの必要がないため環境にやさしく、自然との共生ができる再エネ設備として、世界で急増しています。

「水上太陽光発電(水上設置型太陽光発電システム)」

「水上太陽光発電」とは

水上太陽光発電所とは、農業用ため池・貯水池・ダムなどの水面に設置された太陽光発電設備のことです。
浮力のあるフロート架台の上に太陽光パネルを設置し、池底に打ち込んだアンカーとワイヤーロープを繋ぎ、風や水位変動で流されないように固定されています。

持続可能なエネルギーの供給源として、特に日本のような水資源が豊富で、土地の限られた国での導入が進んでいます。
日差しを遮るものがない平らな水面は、太陽光パネルを設置するのに適しており、地上設置型太陽光発電システムよりも発電効率が高いことや、木の伐採や土地の造成などが不要なため、環境にやさしく、自然との共生ができる再エネ設備として注目を浴びています。

水上設置型太陽光発電システムは、陸上での太陽光発電が一般的になってきた現在、さらなるエネルギーの効率化と環境負荷の削減を目指す際の有力な選択肢となっています。

水上太陽光発電(ため池太陽光発電)とは

ため池を活用した水上太陽光発電が注目されている理由

ため池の課題を解決する「ため池太陽光発電」

ため池とは、降水量が少なく、農業用水を確保するために水を貯え、取水ができるよう人工的に造成された貯水池のことを指します。
大きな河川に恵まれない西日本、特に瀬戸内地域で全国の約50%が分布しており、その用途は、農業用水の確保だけに限らず、生物の生息・生育場所の保全や、大雨が降った時に雨水を一時的にためる洪水調整や、下流域の氾濫を防ぐなど防災的な役割も果たしています。前述のとおり、全国には約21万ヶ所のため池があり、そのうちの約75%が「農業用ため池」です。
下記のような「農業用ため池の課題」を解決すべく、ため池太陽光発電は、ため池の利用形態を変える必要がなく、防災・資源の有効活用や減災対策ができるという点から注目されています。

ため池の課題①:ため池の老朽化

農業用ため池の多くは、江戸時代から明治時代にかけて造られており、老朽化しているものも多く、近年、頻発化・激甚化する豪雨などの自然災害により、ため池が決壊する事例が頻発しており、ため池の防災・減災対策は、早急に解決すべき重要な課題となっています。

ため池の課題②:ため池の管理組織の弱体化

ため池の権利者の世代交代が進み、権利関係が不明確かつ複雑となっていることや、農業者の減少・高齢化に伴い、ため池の管理組織の弱体化により、日常の維持管理に支障をきたす恐れがあることが課題となっています。

農業用ため池の分布図

西日本、特に瀬戸内地域に全国の約50%が分布

農林水産省「農業用ため池一覧」参照の上、作成

農業用ため池の築造年代

老朽化が進む農業用ため池は適切な管理が必要

農林水産省「農業用ため池一覧」参照の上、作成

近年の農業用ため池の被災状況

農業用ため池の防災・減災対策が急務

農林水産省「農業用ため池一覧」参照の上、作成

ため池太陽光発電の特徴

発電ポテンシャルが非常に高い

ため池太陽光発電は発電ポテンシャルが非常に高いNEDOの「再生可能エネルギー技術白書」では、日本のため池を含む水上空間において太陽光発電所を設置できる面積は448㎢あり、水上太陽光発電の導入可能ポテンシャルは「38.8GW」と推計され、これは、耕作地に次ぐ2番目の規模と発表されています。水冷効果や遮蔽物が少ないため、地上設置型太陽光発電よりも高い発電効率が期待できます。

自然環境を保全しながら発電できる

ため池太陽光発電は自然環境を保全しながら発電できる水上太陽光発電は、ため池の利用形態を変えることなく、その利用価値を高めることができます。
水上太陽光発電は、野立て太陽光発電とは違い、既存のため池を利用するため、工事にともなう森林伐採や地盤の強化・整地といった土地の造成が必要ないため、自然環境を守りながら、再生可能エネルギーの拡大が望めます。

ため池の適切な管理・財源確保が可能

ため池太陽光発電で適切な管理・財源確保が可能ため池の管理体制の弱体化が懸念されています。
農業用ため池は、地元の自治体や水利組合・土地改良区などによって管理されていますが、農業者の減少や管理者の高齢化が進み、ため池の維持管理とその費用負担が年々厳しくなっています。水上太陽光発電事業では、堤体などの維持管理は発電事業者が行い、ため池水面の賃借料や売電収入が新たな収入源になるため、ため池の適切な管理体制と財源確保が可能です。

ため池太陽光発電の仕組み

ため池太陽光発電の構造

水上太陽光発電施設では、水上にフロート架台、太陽光パネル、接続箱を設置します。
フロート架台とは、浮力のある架台で、内部に発泡スチロールを充填していることが特徴であり、万一、表面が損傷した場合でも決して沈まない構造です。
フロート架台の上に太陽光パネルを設置し、さらに複数のフロート架台をブリッジフロート(作業員が保守作業や点検をするための通路)で連結し、ひとつの「フロートアイランド(太陽光パネルの島)」を構築します。
フロート架台は、風や水位変動で流されないように「アンカー」と呼ばれる錨のようなものとワイヤーロープで水底に固定されています。
固定方法には、ため池の底にアンカーを打ち込む「埋め込み式」と、ため池の底に重りを設置しフロートを固定する「重力式」の係留方法があり、ため池の形や特性に合わせて固定します。発電した電気は地上に設置したパワーコンディショナーや受変電設備を介して系統連系などにより電力供給します。

ため池太陽光発電の構造

水上太陽光発電に向いているため池は?

水上太陽光発電の適地としての「ため池」

ため池には、主に「皿池」と「谷池」の二種類があります。
一般的には、皿池の方が水上太陽光発電に向いていると言われており、その主な理由は「水深」と「水位変動」にあります。
ため池で水上太陽光発電を行う場合、水面のフロート架台が風や水位変動で流されないように「アンカー」と呼ばれる錨のようなものとワイヤーロープで水底に固定します。
皿池は、谷池に比べて水深が浅く、池底が平坦であることから、その作業がしやすいのです。
それに対し、谷池は水深が深いことが多く、フロート架台の方位を保った係留の難易度が高くなります。また、水位変化が大きいだけでなく、谷池の流入部においては、洪水・流木・土砂の流入が想定されるため、風や波以外のあらゆるシチュエーションでの外力を想定し、安全性と安定性が高い設計と施工が求められます。

ため池の種類

平野部に位置する「皿池」

皿池とは、窪んだ土地のまわりに堤防(堤体)を築いて造られたため池で、平野部に多く見られます。もとが平地であるため水深が浅いのが特徴です。集水面積は一般的に狭いため、貯水量も少ない傾向があります。水深は比較的浅く、底が平らな形になることから「皿池」と呼ばれています。
池底にアンカー(錨)を打ち込む作業がしやすい点から、谷池より皿池の方が水上太陽光発電所の設置に向いています。

山間部に位置する「谷池」

谷池とは、山間や丘陵地で谷をせき止めて造られたため池で、山間部で多く見られます。皿池よりも水深が深く、山に囲まれていることから、大きなため池が多く貯水量も大きい傾向があります。川をせき止める堰堤の高さが15メートルを超えるものは、河川法上「ダム」と定義されます。ダムでの水上太陽光発電の施工事例もあるため、ため池の種類にかかわらず、設置の可否について確認するといいでしょう。

水上太陽光発電所の事故を防ぐ安全への取り組み

水上設置型太陽光発電システムの事故

水上太陽光発電のトラブルで多いのは、台風などの強風によるフロート架台のめくれ上がり、衝突による損傷、火災です。
その原因の多くは、想定荷重を超えた風・波などの外力によって偏った荷重がかかることによるものです。
事故を未然に防ぐためには、台風・地震・洪水時の流木といった自然災害による被害を想定し、固定荷重、積載荷重、風圧荷重、波力、土圧・水圧、水面凍結による荷重、地震荷重など想定できるあらゆる外力を算定した上で、資材の選定やシステム設計を行うことが重要です。

水上設置型太陽光発電システム設置の技術基準

太陽光発電設備の建設に適した場所の減少に伴い、傾斜地や農地、さらには水上へと太陽光発電の設置環境が拡大しています。
こうした特殊な設置環境での太陽光発電設備は、一般的な地上設置型太陽光発電設備より設計や施工の難易度が高いため、電気事業法などの法令・地方自治体の条例・ガイドラインなどにおいても、設置に対する安全対策が求められています。

安全に水上太陽光発電を設置するためには、2021年9月に農林水産省から公開された「農業用ため池における水上設置型太陽光発電設備の設置に関する手引き」や、2023年4月にNEDOから公開された「水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン」があり、最新のガイドラインや手引きを確認し、それらに適合した設計を行う必要があります。

農林水産省農村振興局 農業用ため池における水上設置型太陽光発電設備の設置に関する手引き
NEDO 水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン

安心・安全・価値ある「ため池太陽光発電」設計の取り組み

当社のため池太陽光発電の特長

ため池太陽光発電の特長_ユニバーサルエコロジー

沈まない構造

当社で採用しているフロート架台は浮力が4tあり、沈まない構造を持っています。
重量のある太陽光パネルを乗せた場合でも、十分に余裕のある浮力を維持した設計になっています。
既存のフロートに多い、1個の樹脂部材に1枚の太陽光パネルを固定するタイプとは異なり、1個の広く頑丈なフロートの上に、地上設置型と同じような架台を載せ、最大11枚の太陽光パネルを2列あるいは3列に分けて並べます。
1個のフロートの寸法は5m×5mで、1m×2mサイズの大きな発泡スチロールを12.5枚つなげたもので形成されています。
1個のフロートは、フロートフレームと呼ばれる鋼材の部材で側面から補強されており、さらにその外側をアルミ板で覆っているため、側面から発泡スチロールは見えないようになっています。上面もセメントボードで覆っているため、発泡スチロールは見えません。側面をアルミ板、上面をセメントボードでそれぞれ覆うことで、紫外線による発泡スチロールの劣化を防ぎ、さらに、万が一、発電設備が発火した際に、フロートへの引火を防ぐ効果もあります。
  • 一般的なフロート架台

浮力が4tあり、沈まない構造です。
災害に強い設計で、耐久性にも優れています。

災害に強い設計

台風などの強風で大規模な損壊や被災を受ける水上太陽光発電所がある中、当社では、フロートの最後列に並ぶ太陽光パネルの裏に遮蔽シートをつけることで、パネルの裏側方向からの強風による「めくれ上がり(揚圧力)」対策をしております。
また、フロート間は、ボルトなどで固定するのではなく、強度のある鋼材でつなぐことで、風や波などの動きに合わせてフレキシブルな動作をしつつ、フロート同士がぶつからないよう一定間隔を保てるよう工夫しています。
鋼材の結合部分に柔軟性を持たせた構造で、大きく揺れても壊れにくい特徴があります。鋼材は、1本で約5tの負荷に耐えられる仕様で、過剰な負荷がかかり、鋼材が一定以上に曲がった場合は交換するなどメンテナンス性にも優れています。

水を抜いた池でも発電可能

ため池の水位は、大雨・干ばつ・かいぼりなど、一年を通して大きく変化します。
そのため、水位変化があった場合でも、堤体に太陽光パネルがぶつからないよう、池底に打ち込むアンカーの位置やワイヤーロープの長さを計算して設計します。ワイヤーロープは、水位の変化や風・波の性質に合わせて、フロートが移動できるよう、ある程度たるみを持たせておく必要があります。
また、冬場の農閑期など、ため池の水を抜き、フロート架台が着底した状態でも発電し続けられるように、水深や池底の状況など事前調査をしっかりと行い、太陽光パネルの配置検討を行います。ため池の水を抜いた場合や再び水を張った場合にフロートが傾くことにより、設備の損壊がないような工夫も施しており、着底に耐えうるフロート架台です。フロート架台の下面(水に浸かる部分)は発泡スチロールで、着底時に損傷しても部分的に修理しやすく、浮力などの性能に大きな影響はありません。

独自のフロート係留方法

これまで発生した水上太陽光発電の事故の多くは、アンカーに原因があったと言われています。想定荷重を超えた風や波によって、一部のアンカーが抜けたことで、池底に固定されていたフロートが押し流され事故につながるのです。
そこで、当社では、フロートとアンカーの係留についても独自の手法を採用しています。一般的なアンカーが単一抵抗型に対して、当社で採用しているアンカーは複合抵抗型の構造で、1つのアンカーあたり20tの抵抗性能を持ち、一般的な単一抵抗型アンカーと比べて5~10倍の強度があります。
これにより、池底への安定性・安全性に長けるだけなく、相対的に打ち込むアンカーの数を減らすことができ、潜水工事による施工コストの低減にもつながります。アンカーの配置だけでなく、フロートとアンカー係留の設計についても、ため池ごとに手掛けており、安心安全を前提とした設備の長期的な安定稼働に努めております。

環境にやさしい材料

使用資材は、発泡材・鉄・アルミ・ステンレスなど、水質汚染の原因になるものを含まない資材を選定しています。
発泡スチロールなどの樹脂製部材を水に浮かべた場合、化学物質が水に溶け出すリスクが気になるが、採用している材料は、食品トレーなどと同じ食品衛生基準を満たした材料なので、ため池の水の汚染リスクも低いとしている。また、セメントボードで覆うのは、万が一、発電設備が発火した際に、発泡材への引火を防ぐ効果もある。

ほとんどの使用資材は、有価物としてリサイクルできるため、解体時にも産業廃棄物が発生しません。
また、生育環境に配慮して水面に占める設置面積も検討し、フロートの配置に関してもフロート間を30㎝以上空けることで、太陽の光が池底へ届くようにしています。

発泡スチロールなどの樹脂製部材を水に浮かべた場合、化学物質が水に溶け出すリスクが気になるが、採用している材料は、食品トレーなどと同じ食品衛生基準を満たした材料なので、ため池の水の汚染リスクも低いとしている。また、セメントボードで覆うのは、万が一、発電設備が発火した際に、発泡材への引火を防ぐ効果もある。

ため池を活用した水上太陽光発電事業スキーム

ため池を活用した太陽光発電オフサイトコーポレートPPA

ため池を活用した水上太陽光発電事業スキームは、事業に関わる関係者それぞれにとって、多くのメリットがあるものとなっています。
ビジネススキームの一例をご紹介いたします。
ビジネススキーム_ため池を活用した太陽光発電オフサイトコーポレートPPA

ため池太陽光発電のメリット

近年の脱炭素化の流れでより一層注目が集まる水上太陽光発電ですが、他の設置方法による太陽光発電にはない特有のメリットが存在するのも注目を集める理由のひとつです。これまで水上太陽光発電施設は西日本を中心に全国で導入が進んでおり、その多くが農業用ため池を活用しています。
その理由には、発電事業者にも土地改良区や水利組合などのため池管理者にも大きなメリットがあることが挙げられます。
ため池太陽光発電のメリット

発電事業者のメリット

① 野立て太陽光発電よりも発電量が多い

水冷効果や遮蔽物が少ないため発電効率が高い

太陽光パネルは、高温に弱く、表面温度が上がるほど発電効率が下がる特徴があります。一般的に効率よく電気を生み出す太陽光パネルの表面温度は25度とされており、25度を超えた場合、1度上昇するごとに0.45%ずつ発電量が低下するとされています。そのため、太陽光パネルの温度は低く保つことが理想になります。
そのため、野立て太陽光発電や工場・倉庫などの屋根への設置と比較した場合、水上太陽光発電は風通しがよく、水面の冷却効果もあって、発電効率が高い傾向にあります。また、ため池などの周りには、高い建物や樹木などの遮断物や障害物が少なく、太陽光パネルに影ができにくいことからも、発電効率が高く、野立て太陽光発電よりも10~20%発電量が多いとされています。

② 大規模な土地の造成が不要

ため池管理の財源確保ができる

大規模な土地の造成が必要ないのは、水上太陽光発電ならではの特徴です。
地上に設置する「野立て太陽光発電」の場合、山林などに設置することが多く、土地の造成・整地・森林伐採が必要な場合があり、時間やコストが大きくかかってきます。また、山林を切り開くことは、環境破壊にもつながり、開発には限界があります。一方、水上太陽光発電は水上を利用するため、土地の造成などの必要もなく、ため池の利用形態を変える必要もありません。フロート式の太陽光発電を浮かべるだけで済むため、一定のコストで発電所を建設することができます。
水上太陽光発電は、雑草の除草作業の手間もなく、監視カメラ設置による不法投棄の防止にもつながり、管理面でのコスト削減や手間の削減につながる点も魅力です。

ため池管理者のメリット

① ため池管理の財源確保ができる

ため池の水面を発電事業者に貸し出すことで、維持管理に関する費用と労力を削減することできます。
賃借期間中は、発電事業者がため池の維持・修繕その他の管理を担うため、堤体や洪水吐、取り水施設の点検といった作業から解放されます。は軽減され、
多くを担うことになるためである。その上、太陽光発電事業者から、従来は考えられなかった賃借料が入るようになる。
一方、発電事業者にとっては、土地に比べて相対的に安く借りることができ、事業性を高めやすくなります。
所有しているため池は、たとえそのまま放置していたとしても維持管理費用などの負担がかかります。

② ため池管理の負担を軽減できる

農業用ため池は、令和元年7月に施工された「ため池管理保全法(農業用ため池の管理及び保全に関する法律)」によって、ため池の所有者に対して、農業用ため池の機能が十分に発揮されるよう、適正な管理に努めるよう定められています。
そのため、定期的に草刈りや泥上げを行うとともに、ため池の点検や機能診断を実施し、必要に応じて堤体の補修を行う必要があります。
その維持管理は、主に地元の自治体や土地改良区が担っていますが、農業者の減少や管理者の高齢化が進み、ため池の管理にかかわる作業負担が増大し、管理の粗放化が深刻な問題になりつつあります。しかし、農業用ため池を発電事業者に貸し出すことによって、発電事業者から維持管理費が出るため、作業を外部委託することで、ため池管理の負担を軽減することができます。
ため池は市町村が所有し、地元の水利組合が管理していますが、市町村には行政財産の使用料、水利組合には水面利用料が入ります。財政の厳しい香川県の自治体や水利組合にとって、貴重な財源となるのです。

③ ため池の水質改善になる

ため池の水質汚染の原因とされている植物プランクトンは、光合成によって異常発生するとされています。
ため池に水上太陽光発電所を設置することで、太陽光パネルや架台が水中への太陽光を遮るため、藻や水槽の異常発生を抑制し、水質改善が期待できます。なお、太陽光パネルの水面占有面積は、野鳥や魚などの生息環境への影響が出ないよう配慮した上で決定します。

④ ため池の渇水対策になる

水上太陽光発電は、水の蒸発防止にも効果があります。
降水量が少なく渇水の多い地域では、農業用ため池に雨水を貯め、節水しながら農業を営んでいますが、雨が降らない日が続いたり、夏場などで気温が高くなったりすると、ため池の水は蒸発してしまいます。
しかし、水上太陽光発電を設置することで、ため池に蓋をすることになるため、水の蒸発を防ぐことができます。また、フロート架台に使用されている発泡材には、断熱効果があるため、ため池の温度上昇を防ぎ、さらに蒸発を抑えられる可能性が高くなります。

ため池太陽光発電のデメリット

① 自然災害への対策が必要

水上太陽光発電所を設置する場合、台風や地震、洪水時の流木といった自然災害による被害想定や対策が重要です。
水上太陽光発電では、ワイヤー状の係留線を水中に伸ばし、アンカーという杭を水底に打ち込んで、太陽光パネルやフロート架台が強風で流されないようになっています。
しかし、設計風速を超える強い風などの影響で想定荷重を超えた場合、風や波、その他の外力によって太陽光パネルが揺れ動き、偏った荷重がかかるとアンカーが外れたり、フロート架台ごとめくれ上がるなどして、アンカーの損壊やパネルの火災につながる恐れがあります。このような事態を未然に防ぐため、アンカーの負荷を分散させるような設計や、太陽光パネルの捲れ上がり防止策が求められます。

② 利水管理による水位変動の対策が必要

ため池は、利水のために築造された農業水利施設であり,洪水調整容量の設定は総貯水量と必要な用水量の差の範囲でのみ可能である。
ため池は利水のために築造された農業水利施設で
モンスーン気候が有する季節的水位変動パターンや水位変動による攪乱
ため池の水を利用すると、少しずつ水位が下がっていきます。
また水位が低下したり上昇したりすると、日光の入り方・太陽光パネルと日光の位置関係および角度が変わってしまい、発電効率の低下につながる可能性もあります。
そのため、ため池を利用しながら太陽光発電を運用する場合は、O&M業者へ発電効率の変動に関して相談を行いながら管理を進めていく必要があります
利水管理によって発生する水位の変動にも対策が必要となります。

③ 防水や漏電の対策が必要

水上設置型太陽光発電設備については、電気事業法の規定に基づく技術基準適合義務を遵守し、感電・火災その他人体に危害を及ぼす恐れ、または発電設備に損傷を与える恐れがないように、安全を確保した設計・設置方法とする必要があります。
水上太陽光発電所では、水が原因による腐食や漏電による事故の発生リスクが高いと言われています。そのため、架台やパワーコンディショナー、接続箱など防水・腐食・腐朽など劣化を生じにくい対策を行わなくてはなりません。

④ 施工業者・メンテナンス業者が少ない

水上太陽光発電は、野立て太陽光発電に比べて、施工できる業者数が少ない現状があります。そのため、工期が長くなったり、工事の質に差が出てしまうこともあります。
同様にメンテナンス作業を行える業者も限定されてきます。
保守点検の足場が水面であるため不安定なこと、アンカーや固定用ケーブルなどの点検のため潜水が必要になるなど、高度なメンテナンス技術が求められます。また、天候によってはメンテナンスが延期されることなど、手間や時間・コストがかかることがあります。


ため池太陽光発電のメンテナンス方法

ドローンによる太陽光パネルの点検

可視・赤外線カメラを搭載したドローンを使って、上空から不具合箇所を確認します。操縦者と地上から機体を目視して図面を確認する2人体制で行い、その後、パソコン上で再度確認して、不具合がないことを確認します。
ドローンによる太陽光パネルの点検

フェンスや備品・PCSなどの点検

地上設置型太陽光発電と同様に、フェンスや柵設置に問題が起きていないか、パワーコンディショナーに腐食や破損がないかを確認して、検査機器を使って発電量や接続状況を確認します。
フェンスや備品・PCSなどの点検

水中ドローンによる支持物の点検

水中にある係留索やアンカーは、発電設備を水上に固定する重要な役割のため、損傷・劣化によっては火災など重大事故につながります。水中ドローンで撮影したものをリアルタイムで確認するとともに、空撮同様にパソコンで再度確認しながら、不具合がないことを確認します。
水中ドローンによる支持物の点検

フロートアイランド上での目視点検

フロートアイランド上を移動して、太陽光パネルの汚れ・劣化・損傷や、パネル間の配線、フロートの劣化・損傷・フロート内への浸水や傾斜の有無を目視で確認します。フロート上は滑りやすく、浮遊物のため水没や転落・転倒に注意し、必ずライフジャケットを着用します。
フロートアイランド上での目視点検

ため池太陽光発電の開発スケジュール

ため池太陽光発電_開発スケジュール

① 資料調査1ヶ月程度
  • 航空写真や地形図等から候補地について検討調査します。
  • ため池管理者ならびに関係法令による規制適用状況を確認します。
  • ため池ハザードマップや過去の水害などの発生状況を調査し、想定しうるリスクについても確認した上で、水上太陽光発電設置の適否を判断します。
② 現地調査0.5ヶ月程度
  • 池だけでなく、周辺環境(隣地の利用状況、搬入経路、障害物の有無、系統連系を行う地点など)を調査します。
  • ため池の健全度を把握し、調査結果を踏まえて、劣化状況および決壊リスクの評価を行います。
  • 係留設計における重要な設計条件となる水深や水底地形を調査します。
③ 水中の地盤調査0.5ヶ月程度
  • 係留設計に重要な水底地形や水底土砂の性状を確認します。
    調査船上から採泥器を用いた底質採取、潜水士による目視調査と採泥、音波探査などの方法があります。
  • ため池の堤体や水底には、遮水構造を有している場合があるため、施工時に損傷させないよう、事前に調査により確認しておく必要があります。
④ システム設計・資材発注3ヶ月程度
    • 発電設備設置者には、経済産業省や環境省が策定した太陽光発電設備に係る各種法令、技術基準やガイドラインの要求を満足する設計及び施工が求められます。
    • 固定荷重、積載荷重、積雪荷重、風圧荷重、波力、土圧・水圧、水面凍結による荷重、地震荷重などの外力を算定した上で、資材の選定やシステム設計を行います。
    • 池の形・周辺環境・景観・生態系への影響を考慮し、フロートの配置計画、係留索を考慮したアイランドの配置計画を立て、最も効率よく発電できるようにシステム設計します。ロスなく送電できるように、パワーコンディショナーやキュービクルの設置場所などの工夫が必要です。
⑤ 施工工事6ヶ月以上
  • 事前に地域住民に説明し、周辺環境に配慮した対策を適切に実施します。
  • ため池の機能に影響を及ぼすことのないように水上設置型太陽光発電設備を適切に設置します。
  • かんがい期や動植物の繁殖期を避けるなど、施工時期の検討が必要です。
    かんがい期に工事を行う場合は、代替水源の確保等、水利用に支障がないよう、対策を講ずる必要があります。
  • 増水・洪水などによる資機材の流出やフロートの飛散などの災害を防止するため、気象条件のいい施工時期の選定、リスクの少ない施工方法・施工手順の検討などを行います。

ため池太陽光発電 施工の流れ








現地調査

ため池や周辺環境を確認し、水上太陽光発電を設置できるか現地調査します。
周囲の環境や生態系への影響も含め、日射環境や施工環境、資材の運搬やメンテナンスが容易な立地かどうか、水上太陽光発電設備を稼働させた場合に、現状の環境へ弊害が生じるリスクがないかなど、事前調査を行います。
ため池の堤体や水底には、遮水構造を有している場合があるため、施工時に損傷させないよう、事前に水中調査により確認しておく必要があります。

現地調査での確認ポイント

  • ため池形状・水中の地盤調査深浅測量・水底地形・水底土砂の性状・地耐力調査・水域環境などの把握)
  • ため池の健全度(過去の水害などの発生状況の確認・劣化状況・決壊リスクの評価)
  • 日射環境
  • 施工環境(隣地の利用状況、搬入経路、障害物の有無、変電設備設置場所、系統連系を行う地点)
  • 生態系の維持・生態系や環境への弊害リスク

資材の搬入

水上太陽光発電を設置する際、フロート架台や太陽光パネル、接続箱、パワーコンディショナーなどの資材は、大型トラックでため池に隣接する空き地まで運びます。そこで、組み立てなどの作業を行い、フロートを取り付けたユニットをラフタークレーンで吊り上げ、池に浮かべます。
そのため、池の周囲までの搬入経路と、作業スペースが確保できることが前提条件になります。また、水上太陽光発電所で発電した電気は、電力系統を通して運ぶため、ため池の近くに電柱があることを推奨しています。

水上太陽光発電所の設置における推奨条件

  • 池の周囲までの搬入経路が確保できる
  • 池の周囲に荷置き・作業スペースがある
  • 池の周囲に電柱がある

シャーシ組立

フロート上部の架台の組み付けを行います。
作業台に4本のファインフロアー配置し、規定寸法の位置出しをします。
その後、ベースアングル底板を左右3組で配置し、ベースアングルをファインフロアにボルト締めます。

フロートベース組立

フロートの下地を組立てます。
作業ステージにアルミバンドとワイヤーを配置し、フロート(発泡材)を配置します。
フロートの発泡スチロールは、食品トレーにも使用されている食品トレーにも使用されている「HACCPに基づく衛生管理(旧・食品衛生法)」をクリアした原材料のため、水質汚染はありません。

シャーシとフロートベースの結合(フロートアイランド設置)

シャーシとフロートベースを結合し、フロートアイランドの設置を行います。
先のシャーシ部をフロート(発泡材)の上に移動設置します。
アルミ側板とアルミコーナー板を取り付け、さらにパネルアングル、クロスバー(最北列3個)の取り付けをします。

太陽光パネルの取付け

フロートに太陽光パネル固定金具を取り付け、太陽光パネルを固定します。
その後、フロート内の太陽光パネルの配線を行います。

進水・係留作業

準備が整ったら、進水します。(場合によってはボートなどで水上の設置場所に洩航)
フロート架台が風などで流されないよう、フロート架台の係留具を池底に打ち込んだアンカーとロープで接続し、風などで流されないようにしっかりと固定します。ため池の形や特性に合わせて、最適な係留方法でフロート架台を固定します。

係留方法

  • 埋め込み式・・・ため池の底にアンカーを打ち込む
  • 重力式・・・・・ため池の底に重りを設置しフロートを固定する

連系

竣工検査、リレー試験などを行い、安全性が確認された後、電力会社様立ち会いの元で連系し、発電開始となります。


水上太陽光発電を対象とした
補助金制度

補助金の活用でお得に水上太陽光発電を設置

補助金制度を活用して水上太陽光発電を導入することで、導入費用を大幅に抑えることができます。
水上太陽光発電を対象とした2024年における補助金の一例をご紹介いたします。

【環境省】
地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業

地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業

対象設備 ため池・営農地・廃棄処分場
補助率 1/2
条 件 ・ため池を活用した太陽光発電設備の導入を行う事業であること
・PCS最大定格出力の合計が10kW以上であり、積載率が1以上であること
・FIT/FIP制度による売電や自己託送を行わないこと etc…
公募要領 一般社団法人環境技術普及促進協会

【経済産業省】
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金

需要家主導型太陽光発電導入支援事業

対象設備 オフサイトの太陽光発電
補助率 1/3~2/3
条 件 ・合計2MW以上30MW 未満の新設設備であること
・FIT/FIP制度を活用しないこと
・需要家と発電事業者とがPPA等で8年以上の契約をするものであること etc…
公募要領 JPEA太陽光発電推進センター(JP-PC)

ため池太陽光発電に関する
よくある質問

水上太陽光発電が設置できないため池はありますか?

水上太陽光発電の設置によって考えられる生態系への影響はありますか?

水上にどうやって太陽光パネルを設置するのでしょうか?

ため池の水を抜いた場合、どのような影響がありますか?

太陽光パネルが反射して眩しくないでしょうか?

集中豪雨や激しい台風による影響はありませんか?

ため池太陽光発電の施工実績

ため池太陽光発電_ユニバーサルエコロジー株式会社
ため池太陽光発電_ユニバーサルエコロジー
水上設置型太陽光発電(ため池太陽光発電)


ため池太陽光発電に関するお問い合わせはユニバーサルエコロジーへ
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