コラム

ソーラーシェアリング普及に向けて偏見、先入観との戦い

「ソーラーシェアリングでは稲作はできない」

「ソーラーシェアリングでは良質な作物は作れない」

 

つい最近まで筆者もそのような先入観を持っていました。そのため、「ソーラーシェアリングは農業とは相容れない関係である」と思い込んでいました。

 

そんな筆者の思い込みが崩れ、感動に変わり(少々大げさですが)、その思いの前に立ちははざかる大きな壁について書きます。

 

ソーラーシェアリングで作れない作物などない

さる10月27日に千葉商科大学の公開講座にて、市民エネルギーちば合同会社(千葉県匝瑳市)にて代表を務める東光弘さんの講演を聞く機会がありました。終了後に直接、東さんとお話する機会がありました。その中で東さんは「ソーラーシェアリングで作れない作物などない。しかも良質な物が採れる。地域循環型の取り組みとして、付加価値もつけることができる」とお話されました。

 

どんな作物でも、光合成関して光飽和点があります。その光飽和点以上に太陽の光を与えて作物の生育に差は出ません。つまり作物に一定量の陰が当たっても、作柄に問題のないことを意味し、その点に着目したのがソーラーシェアリングになります。

 

ですので、ソーラーパネルの間隔を調整することによって、どんな作物でも作ることはでき、稲作であっても十分に可能であることを実証したと前述の東さんは語ります。稲作の場合は、他の作物よりも多く日を当てれば、つまりソーラーパネルの間隔を広めに取れば問題なく生育することが実証されています。

 

作物はその地の気候と、土壌の状況から生育が適するか否かが決まってきます。その状況に合わせていけば、ソーラーシェアリングは成り立ちます。東さん曰く、意識として農業60%、太陽光40%の割合で、農業を優先する形であれば、太陽光発電、ひいては再生可能エネルギーと農業の共存は可能になります。

 

ソーラーシェアリングが作る地域循環型社会の実現

東さんが事業を行う千葉県匝瑳市も、毎年1%以上人口が減少し続けています。15歳から64歳までの生産年齢人口はそれ以上に減少しています。それに伴い、耕作放棄地が増え、農業は静かに衰退していきました。日本の典型的な地域社会と言えます。

 

東さんと市民エネルギーちばの挑戦は、人口減少に苦しむ匝瑳市や地元の方々に受け入れられ、工事費用、固定資産税等の税収、地元地権者への地代支払い等で、20年間の合計で約3億8,000万円位上のお金が循環し(同社試算)、今や匝瑳市の町おこしに欠かせない存在になりつつあります。いずれ近い将来、FIT(固定価格買取制度)が終わった後は、発電した電力も、現在の電力会社への売電から、地産地消に変わっていくことも予想されます。

 

もちろん周囲の反対、最初の何年かは、作物も試行錯誤の連続であったことは言葉の中から感じることができました。短い時間であったので、深いお話はできなかったものの、そのご苦労は想像を超えるものだと思います。

 

市民エネルギーちばやその代表の東さんの「地域循環型社会の実現」の経験や、現在も発展途上にあるビジネスモデルを日本中に伝えたい東さんの思いを強く感じ、お話の終わりの頃には、筆者が持つ偏見や先入観は根底から変わり、私も、私の会社も、ソーラーシェアリングを通じて地域循環型社会を実現したい思いを一層強くなりました。

 

総論賛成、各論反対の現実の壁

申し遅れましたが、筆者の実家は専業農家で、父親は間もなく75歳になります。前述の東さんによると、我が国の農業従事者の平均年齢は66.7歳であり、筆者の実家も典型的な日本の農業従事者になります。

 

筆者は講演の翌日、実家の田んぼを見に行き、ここで「地域循環型社会の実現」のイメージが自ずと浮かんできました。

 

そんな思いを携え、父親に思いを伝えました。父親から出た言葉は、

 

「絶対に太陽光はしない。土地も貸さない。少なくとも自分の代では絶対にしない」と強烈な反対の言葉を連続していただきました。もちろん落ち込みましたが、この瞬間、市民エネルギーちばやその代表の東さんの苦労が目に浮かんだ瞬間でもありました。その後も父親は続けました。

 

「日本が東日本大震災での福島での教訓を受け、世の中の風潮が脱原発に変わりつつあるのは理解できる。しかし、うちの田んぼや近所でやってもらったら困る。近所に建てられたら困ると、太陽光や風力発電も反対している人もいるじゃないか」と、日本のエネルギー事業や再生可能エネルギーについては、総論は賛成であっても、近所でやられたら困ると各論は反対の姿勢を示しました。

 

父親から強烈に反対されましたが、地域循環型社会をソーラーシェアリングで実現したい思いは変わることはありません。ある意味、現実を目の当たりして、その思いは強くなりつつあります。実家の稲作地は粘り気がある粘土質の土壌で、地元の人々も「日本一美味しい◯◯の米」(◯◯は地名が入ります)と1俵(約60キロ)の米袋に書かれていた記憶が鮮明に残っています。そのように日本には、まだまだ沢山の農産物がブランドとなり、生産されています。その多くが地域の人口減と就農者の高齢化に直面しています。

 

「地方の人口減少」「就農者の高齢化」「脱炭素化に向けた世界的潮流」、これらは一見結びつかない言葉にかもしれません。ソーラーシェアリングはそれらを結びつけ、「地域循環型社会の実現」に寄与する一手段であります。

 

一方で、まだまだ反対や否定的な意見が多いのも事実です。先日参加した千葉商科大学に根付く精神として「まず、隗より始めよ」、志をもった者が、小さいことから始めていく。当太陽光発電TIMESでは、今後もソーラーシェアリングと地域振興についても、継続的に語っていきたいと考えます。

 

(太陽光発電TIMES編集部 T.)

Pick-Upピックアップ